賃貸借契約を解除できるのはどのような場合か?

賃貸借契約の終了原因の1つに賃貸借契約の解除があります。ここでは,この賃貸借契約を解除できるのはどのような場合なのかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

(著者:弁護士 志賀 貴

契約の解除

契約は,法定貴拘束力を伴う約束です。したがって,簡単に契約を無かったことにすることはできません。

契約の解除とは,当事者の一方の意思表示によって,契約を無効とすることをいいます。要するに,契約を無かったことにして終了させるということです。

しかし,上記のとおり,契約は簡単に無かったことにはできないからこそ契約なのです。したがって,契約を解除することができる場合は,非常に限られてきます。

賃貸借契約も契約ですから,簡単に解除できるものではありません。しかも,当事者間の信頼関係を基礎とする継続的な契約である賃貸借契約は,他の一回的な契約よりも契約解除できる場合が限られると考えられています。

賃貸借契約を解除できる場合としては,合意解除の場合と法定解除の場合があります。

>> 賃貸借契約とは?

賃貸借契約の合意解除(解約)

賃貸借契約を解除できる場合(解除原因)の1つは,当事者間で契約を解除するという合意をした場合です。「合意解除」「合意解約」と呼ばれます。

前記のとおり,契約を解除できる場合は限られています。しかし,それは,当事者が契約という約束をしたということを無にしないようにするためです。

したがって,当事者が解除するという合意をしたならば,解除を認めたとしても当事者の意思に反することにはなりません。むしろ,当事者の新たな意思に沿うといえるでしょう。

そのため,合意解除・合意解約は,特に制限なく認められます。

>> 契約解除の類型

賃貸借契約の法定解除

法定解除とは,法律で定められている契約解除の原因がある場合に,それを理由として解除をすることをいいます。

賃貸借契約の場合,具体的にいえば,賃借物を賃借人が賃貸人に無断で転貸または賃借権を譲渡してしまった場合,または,賃貸借契約について債務不履行があったときに解除をすることができます。

無断転貸・無断賃借権譲渡による解除

賃貸借契約は,賃貸人と賃借人との信頼関係に基づく契約です。つまり,賃貸人は,その賃借人だからこそ貸しているという信頼関係が根底にあるのです。

それにもかかわらず,賃借人が,賃貸人に無断で,誰とも知らない人に勝手に目的物を利用させてしまうというのは,信頼関係に反する背信的な行為といえます。

そのため,賃借人が,賃貸人に無断で,目的物を転貸してしまったりまたは賃借権を譲渡してしまった場合,賃貸人は,賃貸借契約を解除できるとされています(民法612条2項)。

ただし,賃貸借契約は,上記のとおり,売買などの一回的な契約と違い,賃貸人と賃借人の間の信頼関係に基づく継続的な契約関係です。

そのため,ただ無断転貸や無断賃借権譲渡があったというだけで契約を解除できるとするのは,契約を継続させようという当事者の合理的に意思に反する場合があり得ます。

そこで,賃貸借契約のような継続的契約においては,当事者間の信頼関係を破壊するといえるほどに重大な背信行為がある場合に限り,契約を解除できると解されています。

この考え方のことを「信頼関係破壊の理論(背信行為論)」といいます。

したがって,民法612条2項による賃貸借契約の解除が認められるのは,単に無断転貸または無断賃借権譲渡があったというだけでは足りず,賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊したといえるほどの事情がある場合に限られることになります。

債務不履行による解除

賃貸借契約が成立すると,賃貸人は目的物を使用収益させる義務などの法的義務を負い,他方,賃借人賃料を支払う義務などの法的義務を負うことになりますが,これら無断転貸・無断賃借権譲渡禁止違反以外の法的義務に違反した場合にも,その義務違反者の相手方は債務不履行を理由として契約を解除できます(民法541条)。

ただし,前記のとおり,賃貸借契約には「信頼関係破壊の法理」が適用されます。

信頼関係破壊の法理は,前記の民法612条2項解除の場合だけでなく,それ以外の民法541条による債務不履行解除の場合にも適用されると解されています。

したがって,賃貸借契約の債務不履行解除が認められるのは,単に契約違反があったというだけで足りず,賃貸人と賃借人の信頼関係を破壊したといえるほどの契約違反がある場合に限られることになります。

たとえば,賃料滞納の場合で言うと,賃借人が1か月賃料を滞納したというだけでは賃貸人は契約を解除することはできず,数か月賃料を滞納した場合にはじめて,賃料滞納を理由として契約を解除できるとされています。

>> 信頼関係破壊の理論(法理)とは?

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